ディープテックの市場は、世界と日本でどのような動きを見せているのでしょうか。この記事では、ディープテックの市場規模や投資動向、将来性について解説します。世界と日本の動向に加え、市場が拡大する背景や成長が期待される分野、事業化に向けた課題まで整理しました。

自社の技術資産を活かした新規事業への参入や投資を検討する際の判断材料として、まずはディープテックの市場規模から確認していきましょう。

ディープテックの市場規模

ディープテック 市場規模

ディープテック市場は、人工知能や量子コンピューティングなど、複数の先端技術を含む市場として世界で拡大が見込まれています。ここでは、MarketResearchFutureの調査をもとに、現在の市場規模と今後の成長予測を確認します。

世界のディープテック市場規模

MarketResearchFutureの推計によると、世界のディープテック市場規模は2024年に1,337.7億米ドルでした。同調査では、人工知能やブロックチェーン、量子コンピューティング、IoT、先進ロボティクスなどを対象に市場規模を算出しています。

ディープテックに含める技術領域や算出方法は調査機関によって異なるため、市場規模を見る際は数値だけでなく、どの領域を対象とした調査なのかも確認する必要があります。自社の技術や事業領域と照らし合わせることで、新規事業を検討する際の市場把握に活用できるでしょう。

ディープテック市場の成長予測

MarketResearchFutureでは、世界のディープテック市場は2025年から2035年にかけて拡大すると予測しています。市場規模の予測は以下のとおりです。

年市場規模
2025年1,501.5億米ドル
2035年予測4,765.1億米ドル

2025年から2035年までの年平均成長率(CAGR)は12.24%で、市場規模は約3.2倍になる予測です。中長期的な成長が見込まれる一方、この数値はMarketResearchFutureが対象とする技術領域に基づいています。自社で参入や投資を検討する際は、市場全体の成長予測だけでなく、対象とする技術分野の動向も確認するとよいでしょう。

参照:MarketResearchFuture|DeepTechMarket

日本のディープテック市場の動向

ディープテック 市場規模

日本のディープテック分野では事業化に向けた環境整備が進む一方、ベンチャーキャピタル(VC)による投資は欧米と比べて低調です。経済産業省の「スタートアップエコシステム調査2026」では、日本のディープテックへのVC投資額は2025年に34億米ドルで、米国の2,544億米ドルや英国の130億米ドルなどを下回っています。

一方、国内では企業や大学、研究機関などが持つ技術シーズの発掘から事業化まで、一貫した支援が進められています。日本は世界との差があるものの、研究成果を事業につなげる環境づくりが進んでいる段階といえるでしょう。

参照:経済産業省|スタートアップエコシステム調査2026

参照:経済産業省|研究開発型スタートアップ支援

ディープテックへの投資動向

ディープテック 市場規模

ディープテックへの投資は世界的に拡大しており、日本でも研究開発型スタートアップへの資金流入が進んでいます。ここでは、投資額の推移と資金が集まる分野から、ディープテックへの投資動向を確認します。

ディープテックへの投資額の推移

世界のディープテック関連VC投資は、中長期的に大きく拡大しています。経済産業省の資料では、世界の投資額は2013年の300億米ドルから2022年には2,970億米ドルへ増加しました。一方、日本の研究開発型スタートアップの資金調達額は、2019年の2,311億円から2022年には3,453億円まで増加し、2023年は3,283億円となっています。

世界と日本では対象となる指標が異なるため、単純比較はできません。単年では増減があるものの、中長期的には研究開発を基盤とする事業への資金流入が拡大しています。

参照:経済産業省|攻めの経営・投資・イノベーションについて

ディープテックの主な投資先

ディープテックへの投資対象は、幅広い技術領域に及びます。経済産業省の「スタートアップエコシステム調査2026」がディープテックへのVC投資の集計対象として示すのは、以下の領域です。

  • AI
  • エネルギー・環境
  • バイオ・医療・ヘルスケア
  • 素材・産業
  • 航空・宇宙
  • 食糧・農業

投資対象となる技術は一つの分野に限らず、複数の領域にまたがるのが特徴です。自社で投資や参入を検討する際は、こうした分野と自社の技術資産との接点を確認することが判断材料になるでしょう。

参照:経済産業省|スタートアップエコシステム調査2026

ディープテック市場が拡大する背景

ディープテック 市場規模

ディープテック市場の拡大には、社会課題の解決につながる技術への期待と、研究開発から事業化を後押しする政府の支援が関係しています。長期的な研究開発や多額の資金を必要とするディープテックでは、技術を求める社会の動きに加え、実用化を支える環境も市場の広がりに影響します。

社会課題の解決に向けた需要の高まり

社会課題の解決につながる技術への期待は、市場拡大の背景にあります。経済産業省は、国際社会が多様かつ困難な社会課題に直面するなか、ディープテック・スタートアップが持つ革新的な技術には、その解決につながる可能性があるとしています。

長期的な研究開発が必要な技術であっても、社会課題を解決し、新たな産業を生み出す可能性が期待されているのです。こうした社会課題の存在が、ディープテックの活用を検討する動きにつながっています。

参照:経済産業省|ディープテック・スタートアップ支援事業の基本方針

政府によるディープテック支援の拡大

政府による支援は、ディープテックの研究開発や事業化を後押ししています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、研究開発から量産化まで、事業段階に応じた支援を実施しています。主な支援段階は以下のとおりです。

  • 実用化研究開発(前期)
  • 実用化研究開発(後期)
  • 量産化実証

事業期間は2023年度から2032年度までで、予算額は総額877億円です。長い開発期間と大規模な資金を必要とするディープテックに対し、こうした支援が研究成果を事業化や社会実装へ進める環境づくりにつながっています。

参照:NEDO|ディープテック・スタートアップ支援事業

ディープテックで成長が期待される分野

ディープテック 市場規模

ディープテックでは、研究開発だけでなく、実用化や産業化に向けた取り組みも進んでいます。なかでも人工知能、量子コンピューティング、バイオテクノロジーは、幅広い産業への応用や新たな市場の創出が期待される分野です。ここでは、3分野の動向と成長性を確認します。

1.人工知能

人工知能(AI)は、幅広い分野への活用が期待される技術です。
内閣府の「人工知能基本計画」では、AIの利活用を進め、社会課題の解決や新たな事業・産業の創出につなげる方向性が示されています。AIの活用が想定される分野には、次のような領域があります。

  • 医療・介護
  • 農林水産業
  • 社会インフラ
  • 科学研究
  • 行政

AIは特定の産業に限らず、既存の製品やサービス、研究開発と組み合わせて活用できる技術です。自社が持つ技術資産との接点を探ることで、新たな用途や事業機会の検討につながるでしょう。

参照:内閣府|人工知能基本計画

2.量子コンピューティング

量子コンピューティングを含む量子技術では、研究開発から産業化へ向けた取り組みが進められています。内閣府は「量子エコシステム構築に向けた推進方策」を策定し、企業や研究機関などの連携強化やユースケースの創出を推進しています。量子技術を産業として発展させるには、研究成果を実際の用途につなげ、民間投資を呼び込む環境づくりも重要です。

研究段階から実用化・産業化へ向けた動きが進むなか、自社の事業領域でどのような用途が生まれるかを継続的に確認する価値があるでしょう。

参照:内閣府|量子エコシステム構築に向けた推進方策

3.バイオテクノロジー

バイオテクノロジーは、医療からものづくりまで活用領域が広い技術です。
内閣府の「バイオエコノミー戦略」では、環境・食料・健康などの課題解決への期待を背景に、世界的な政策・市場競争が加速しているとしています。同戦略では、成長が期待される市場領域として次の分野などが示されています。

  • バイオものづくり
  • バイオ医薬品
  • 再生医療
  • ヘルスケア

バイオテクノロジーの事業機会は、医療分野だけに限られません。自社の技術資産との接点を探る際は、製造や素材、環境なども含めて活用可能性を検討するとよいでしょう。

参照:内閣府|バイオエコノミー戦略

ディープテック市場の将来性

ディープテック 市場規模

ディープテック市場は今後も拡大が予測される一方、事業化には長期の研究開発や資金調達などの課題があります。市場の成長性だけで参入を判断するのではなく、成長を支える動きと事業化までの条件をあわせて確認することが重要です。

市場拡大が期待される理由

市場規模の予測と投資の拡大から、ディープテック市場には今後も成長余地があると考えられます。MarketResearchFutureによる市場予測と、経済産業省が示す投資動向を整理すると、次のとおりです。

指標起点最新・予測変化
世界市場規模2025年1,501.5億米ドル2035年4,765.1億米ドル約3.2倍
世界のVC投資2013年300億米ドル2022年2,970億米ドル約9.9倍

市場規模は今後の拡大が予測され、ベンチャーキャピタル(VC)による投資も中長期的に増加しています。こうした動向は、ディープテック領域への参入や投資を検討する際の成長性を判断する材料になるでしょう。

参照:MarketResearchFuture|DeepTechMarket

参照:経済産業省|攻めの経営・投資・イノベーションについて

事業化に向けた課題

ディープテックは成長が期待される一方、事業化までに長い期間と多額の資金を必要とします。経済産業省の資料では、ディープテック・スタートアップは研究開発から事業化までの期間が長く、事業化リスクも高いことが課題として示されています。参入を検討する際は、次のような点を確認する必要があります。

  • 長期の研究開発
  • 多額の研究開発費
  • 新市場の開拓
  • 資金調達
  • 事業価値の評価

市場の成長性だけでなく、自社が必要な資金や開発期間を確保できるかも重要な判断材料です。自社の技術資産や事業基盤との相性を踏まえ、事業化までの道筋を具体的に検討するとよいでしょう。

参照:経済産業省|攻めの経営・投資・イノベーションについて

まとめ:ディープテック市場の動向を新規事業の検討に活かす

ディープテック市場は今後も拡大が予測され、人工知能や量子コンピューティング、バイオテクノロジーなど幅広い分野で成長が期待されています。一方、事業化には長期の研究開発や多額の資金が必要となるため、市場の成長性だけで参入を判断するのは適切ではありません。

市場規模や投資動向、事業化の課題を踏まえ、自社の技術資産を活かせる領域があるか検討していきましょう。