新規事業のアイデア出し、既存製品の延長線上でしか案が浮かばず止まっていませんか。そんな悩みを持つ方に向けて、この記事では新規事業におけるアイデアの出し方を発想の起点からフレームワーク、絞り込みの観点まで解説します。

顧客課題・市場変化・自社アセットという3つの起点はもちろん、チームで使える発想法や検証すべき案を選ぶ評価基準まで整理しました。仕組みとして再現できる発想法を身につけ、新規事業の検討を前に進める参考にしてください。

新規事業のアイデア出しが停滞する理由

男2人女2人が悩んでいる、アイデアが出ずに困っている様子

新規事業のアイデア出しが停滞する背景には、発想の起点と検討プロセスの両方に課題があるケースが多く見られます。

既存事業の延長線上でしか案が出ない状態や、思いついたアイデアを絞り込む基準が曖昧な状態が典型的です。ここでは、停滞を招く2つの原因を整理し、次の見出しで解決の手順を確認していきます。

既存事業の延長でしか発想できないから

新規事業を検討する担当者の多くは、これまでの成功体験や既存製品の強みを軸に発想を始めることでしょう。その結果、顧客のニーズよりも自社が提供できる技術や商品ラインに意識が向き、発想の範囲が既存事業の周辺にとどまりやすくなります。

過去に評価された企画パターンが暗黙の基準として残り、検討対象が知らないうちに絞られてしまう場合も少なくありません。社内で通りやすい案を優先する姿勢も、発想の幅を狭める一因です。

顧客課題や市場の変化そのものを起点に考える視点を意識的に取り入れることが、既存事業の延長から抜け出す出発点になります。

アイデア創出から絞り込みまでの流れが不明瞭だから

新規事業のアイデア出しが停滞するもう一つの理由は、案を出す工程と評価する工程が切り分けられていないことです。発想の段階で実現可能性や社内の反応を気にしすぎると、突飛に見える案を早い段階で除外してしまい、検討の幅が狭まります。

一方で、出したアイデアを検証すべき仮説として整理し直す工程が抜けていると、どの案から着手すべきか判断できず停滞が長引くのです。

発散のフェーズと収束のフェーズを分け、それぞれに適した手順を踏むことで、アイデア出しから絞り込みまでを一貫した流れとして進められます。

新規事業のアイデアを生み出す3つの起点

市場調査や顧客調査の様子、3つの場面、店員と客のヒアリング、街頭でのアンケート、ネットでのアンケートやレビュー

新規事業のアイデアは、思いつきではなく一定の起点から発想すると精度が上がります。代表的な起点は以下の3つです。

  • 顧客課題
  • 市場変化
  • 自社アセット

ここでは、それぞれの視点から事業機会を見つける具体的な方法を解説します。

顧客課題

顧客課題から発想する際は、顧客自身も言語化できていない「不満・不便・不安」などの「不」に着目すると機会を見つけやすくなります。インタビューや現場観察を通じて顧客の行動や発言を丁寧に拾うと、表面的なニーズの奥に見えてくる本質的なものが、課題です。

以下のような問いを持ちながら顧客と接すると、課題を発見しやすくなります。

  • 普段どのような場面で困っているか
  • 現状はどのような方法で対処しているか
  • その対処法にどのような不満を感じているか

これらの問いから得た情報を整理すると、既存の製品では解決しきれていない領域が浮かび上がり、新規事業のヒントにつながります。

市場変化

市場変化から発想する際は、業界のトレンドや競合の動向、法規制や技術の変化などを幅広く観察することが出発点です。自社が属する業界だけでなく、隣接業界や海外市場の動きにも目を向けると、まだ顕在化していない事業機会に気づきやすくなるでしょう。

競合が新しく参入した領域や、逆に撤退した領域には、市場が変化しているサインが表れやすい傾向があります。社内で定期的に市場動向を共有する仕組みを整えておくと、変化をいち早く事業アイデアへ結びつけられるのです。

自社アセットから

自社アセットから発想する際は、これまで蓄積してきた技術・ノウハウ・顧客基盤を棚卸しし、他の用途に転用できないか検討します。特定の事業で培った技術が、異なる業界の課題解決に応用できる場合も少なくありません。

以下のような観点でアセットを整理すると、活用の方向性が見えやすくなります。

項目内容
技術保有する特許や生産技術、研究開発の蓄積
ノウハウ品質管理や製造プロセスに関する知見
顧客基盤既存顧客との関係性や取引データ

自社の強みを客観的に整理することで、既存事業の枠を超えた新規事業の種を見つけやすくなります。

チームで活用できるアイデア発想のフレームワーク

4つの場面、1つのものから様々なアイデアを出す場面、質問リストをもとに発想している場面、ふせんを使って大量のアイデア出しをする場面、中心テーマから8つの方向にアイデアを広げる場面

新規事業のアイデア発想は、担当者個人のセンスに頼ると再現性が低くなります。フレームワークを活用すれば、チームメンバーが同じ手順で発想でき、成果にばらつきが出にくくなるでしょう。

ここでは、再現性のある発想法を4つ厳選してご紹介します。

SCAMPER|既存製品から新しい案を生み出す

SCAMPERは、既存の製品やサービスを7つの視点から見直し、新しいアイデアへ組み替える手法です。代替する・組み合わせる・応用するなど、決まった問いに沿って検討することで、思いつきに頼らず発想を広げられます。

以下は、SCAMPERを構成する7つの視点です。

項目考え方
1Substitute(代用)代わりに他のものに置き換えられないか
2Combine(組み合わせ)合体させるとどうなるか
3Adapt(応用)他業界のアイデアを応用できないか
4Modify(修正・拡大)大きさの拡大・縮小や形の変更はできないか
5Put to other use(転用)本来とは違う目的で使うことはできないか
6Eliminate(削減)一部のプロセスを削除や簡略化できないか
7Rearrange(再配置)パターンや順序を並び替えたり逆にできないか

既存製品を出発点にできるため、製造業など自社製品を持つ組織で特に活用しやすい手法です。

オズボーンチェックリスト|視点を変えて発想する

オズボーンチェックリストは、9つの質問に沿って対象を検討し、発想の幅を意図的に広げる手法です。

項目考え方
1転用(Other uses)他に使い道はないか
2応用(Adapt)他のアイデアを真似できないか
3変更(Modify)色や形、音や意味などを変えられないか
4拡大(Magnify)大きさや時間、強さを大きくできないか
5縮小(Minify)小さく、軽く、短くできないか
6代用(Substitute)他の材料や方法に置き換えられないか
7再配置(Rearrange)順序やレイアウトを入れ替えられないか
8逆転(Reverse)上下や役割、順序を逆にできないか
9結合(Combine)複数の要素やアイデアを組み合わせられないか

SCAMPERの元になったとされる視点を含み、より幅広い問いかけで発想を促します。

1つのテーマに対して9つの質問を順に当てはめていくと、担当者だけでは気づきにくい切り口を発見しやすくなるでしょう。チームで実施する場合は、質問ごとに担当を分けて検討すると、多様な視点を効率よく集められます。

ブレインストーミング|チームで大量のアイデアを出す

ブレインストーミングは、質より量を優先し、チームで自由にアイデアを出し合う手法です。他者の発言を否定しない、突飛な案も歓迎するといったルールを設けることで、参加者が発言しやすい場をつくれます。

以下は、実施時に意識したいルールです。

  • 批判や評価をしない
  • 自由奔放な発言を歓迎する
  • 量を重視する
  • 他者のアイデアに便乗してよい

大量のアイデアを出した後に整理・統合する工程を分けることで、発散と収束のバランスを保ちながら進められます。

マンダラート|発想を広げる

マンダラートは、3×3のマス目を使い、中心テーマから発想を段階的に広げていく手法です。中心のテーマを囲む8マスに関連する要素を記入し、それぞれをさらに次のマンダラートの中心テーマとして展開すると、発想を連鎖的に広げられます。

マンダラートのチャート画像

1つのテーマから最大64個のキーワードを導き出せるため、アイデアの量を確保したい場面に適しているでしょう。シートを埋める作業自体がシンプルなため、フレームワークに不慣れなメンバーでも取り組みやすい手法です。

根拠のある新規事業のアイデアを複数作成するコツ

男1人が思考中、様々な要素を元にひらめいている、笑顔

アイデア出しの起点やフレームワークを押さえても、整理の仕方によっては思いつきの案から抜け出せません。誰のどんな課題を解決するのかを言語化し、要素を組み合わせて考えることで、根拠のあるアイデアを量産できるのです。

ここでは、思いつきで終わらせないための整理と量産の方法をご紹介します。

WHOやWHATを明確にして整理する

アイデアを整理する際は、まず「誰の」「どんな課題」を解決するのかをはっきりさせることから始めます。WHO(対象となる顧客)とWHAT(解決する課題)が曖昧なまま検討を進めると、後の工程で議論がかみ合わなくなり、よくありません。

以下の項目を1枚のシートに書き出すと、アイデアの前提を関係者間で共有しやすくなります。

  • WHO:想定する顧客や業界
  • WHAT:顧客が抱える具体的な課題
  • 現状の対処法とその不満点

WHOとWHATを最初に固定しておくことで、その後の解決策の検討がぶれにくくなるのです。

課題と解決策そして自社の強みを組み合わせる

根拠のあるアイデアを作るには、顧客・課題・解決策・自社アセットの4つの要素を掛け合わせて整理する方法が有効です。どの顧客が抱えるどんな課題に対し、どのような解決策を提供し、そこに自社のどの強みを活用するのかを1つの文章にまとめると、案の説得力が高まります。

要素検討内容
顧客想定する対象者や業界
課題解決したい具体的な不満・不便
解決策課題に対するアプローチ
自社アセット活用する技術・ノウハウ・顧客基盤

4つの要素を並べて整理すると、経営層への説明時にも根拠を示しやすくなります。

1つの課題から複数の解決案を作る

1つの課題に対して解決策を1つしか出さないと、最初に思いついた案に検討が偏り、結果的に思いつきベースへ戻ってしまいます。同じ課題に対して複数の解決策を並べて検討すると、比較を通じてより実現性の高い案を見極めやすくなるでしょう。

特定の技術を使う案、外部と連携する案、既存サービスを応用する案など、異なるアプローチを意識的に3つ以上出すことがおすすめです。複数案を横並びで比較する習慣をつけると、1つの課題から事業化につながる選択肢を広げられます。

新規事業のアイデアを選定する評価基準

資料やノートが広がった机、ペンやコーヒーにパソコンも机上に置いてある、アイデア出し中のデスク上の光景

複数のアイデアを出した後は、どの案から検証に進めるべきかを見極める工程が必要です。実現可能性、市場規模、顧客課題の深刻度といった観点から評価すると、検討すべき優先順位をつけやすくなるでしょう。

ここでは、アイデアを選定する際に確認したい3つの評価基準をご紹介します。

実現可能性と自社適合性

実現可能性を評価する際は、自社の技術力や人員、予算、既存事業とのシナジーなどを踏まえ、実行できる案かどうかを現実的に見極めます。どれだけ市場性の高いアイデアでも、自社のリソースや事業領域から大きく外れていると、検証段階で頓挫しやすくなるので、おすすめできません。

以下のような観点で確認すると、実現可能性を判断しやすくなります。

  • 必要技術やノウハウを自社で保有しているか
  • 実行に必要な人員や予算を確保できるか
  • 既存事業や取引先との親和性があるか

自社の状況に照らして無理のない範囲かどうかを確認することが、検証段階で失速しないアイデアを選ぶ第一歩です。

市場規模と自社優位性

市場規模を評価する際は、事業として成長させるために十分な顧客数や需要が見込めるかの確認が重要です。あわせて、自社優位性の観点から、競合が模倣しにくい技術や顧客基盤を活かせる案かどうかも見ておく必要があるでしょう。

市場規模が大きくても自社の優位性が発揮できない領域では、後発の競合に埋もれてしまう可能性があります。需要の広がりと自社ならではの強みの両方がそろっている案は、事業として育てやすい候補といえるでしょう。

顧客課題の深刻度

顧客課題の深刻度を評価する際は、顧客がその課題に対して実際にお金を払ってでも解決したいと感じているかの確認が重要です。

「あれば便利」程度の課題は共感を得やすい一方で、優先度が低く、事業として成立しにくい場合があります。既存の対処法にどれだけの手間やコストをかけているかを聞き取ると、課題の深刻度を推し量る材料になるでしょう。

顧客が既に何らかの対価を払って解決しようとしている課題ほど、事業化の見込みが高い傾向にあります。

まとめ:新規事業のアイデア出しを仕組み化して発想する

新規事業のアイデア出しは、思いつきに頼るのではなく、顧客課題・市場変化・自社アセットという起点から発想することで精度が高まります。SCAMPERやブレインストーミングなどのフレームワークを活用すれば、チームで再現性のある発想が可能になり、WHOやWHATを整理して要素を組み合わせることで根拠のある案を複数作成できるのです。

実現可能性や市場規模、顧客課題の深刻度といった評価基準で絞り込み、検証すべきアイデアを見極めながら、新規事業の検討を仕組みとして継続していきましょう。