「PoCとは何をするものなのか、実証実験とは何が違うのだろう」と疑問に感じていませんか。PoCは、新しい技術やアイデアを本格開発する前に、可能性を確かめる取り組みです。

本記事では、PoCの役割や実証実験との違い、ディープテック事業で検証する項目、進め方や注意点を解説します。PoCを適切に進め、事業化の可能性を見極めるための参考にしてください。

PoCの役割

PoCとは

PoCは、新しいアイデアや技術を本格的に開発する前に、小規模な検証を行う取り組みです。ディープテック事業では、優れた技術であっても、実用化できるか、顧客に求められるか、事業として成立するかは分かりません。PoCで不確実な部分を一つずつ確かめ、その結果を本格開発へ進むかどうかの判断に活かします。

アイデアや技術を検証する

PoCでは、新しいアイデアや技術が想定どおりに機能するかを、限られた条件のもとで検証します。研究段階で成果が出ていても、製品やサービスとして形にできるとは限りません。主に、次のような点を確認しましょう。

  • 想定した機能や性能を実現できるか
  • 実際の利用環境でも問題なく動作するか
  • 顧客が抱える課題の解決につながるか
  • 事業化に向けた課題は何か

最初から完成度の高い製品やサービスをつくる必要はありません。必要な部分に絞って試すことで、想定と異なる点を早い段階で把握し、技術やアイデアの可能性と残された課題を整理できます。本格開発に入る前に「試して分かること」を増やせる点が、PoCの役割です。

本格開発に進むかを見極める

PoCでは、限られた時間や資金を有効に使いながら、事業の可能性を探ります。ディープテック事業は研究開発から事業化まで長期化しやすく、見通しが立たないまま開発を続けると、費用や人的負担が膨らむ可能性があります。

そこで、まずは範囲を絞って試し、技術や市場にどの程度の手応えがあるかを探りましょう。想定どおりの結果が得られなくても、改善すべき点や別の用途を検討する材料になります。技術は有望でも市場性が低いなど、試して初めて分かることもあるでしょう。

PoCは成功・失敗だけを判定するものではありません。得られた情報をもとに、次の段階へ進む価値があるかを検討することが大切です。

PoCと実証実験の違い

PoCとは

PoCと実証実験は、どちらも新しい技術やアイデアを検証しますが、確かめる内容が異なります。PoCは「技術やアイデアを実現できるか」、実証実験は「実際の環境で使えるか」を確かめる取り組みです。両者の違いを以下にまとめました。

項目PoC実証実験
目的技術の実現可能性を確認実環境での有効性を確認
実施段階本格開発の前実用化・導入の前
検証範囲必要な範囲に絞る実環境に近い条件で行う
判断本格開発へ進むか判断実用化・導入できるか判断

PoCでは実現の可能性を見極め、その先の実証実験では実用化に向けて検証を進めます。それぞれの役割を区別することで、事業化の段階に合った検証を選びやすくなるでしょう。

ディープテック事業のPoCで検証する項目

PoCとは

ディープテック事業のPoCでは、技術が実現できるかだけでなく、市場で求められているか、事業として成立するかまで確認することが大切です。技術・市場・事業の可能性を多角的に見極める必要があります。研究成果を事業化につなげるために、3つの視点から何を検証するのか見ていきましょう。

技術の実現可能性

PoCでは、必要な機能や性能を満たせるかを、試作やテストを通じて確かめます。研究段階で成果が出ていても、製品やサービスに求められる水準まで到達できるとは限りません。主な検証項目は、次のとおりです。

  • 必要な機能や性能を実現できるか
  • 性能を安定して再現できるか
  • 安全性や耐久性に問題がないか
  • 実用化までに解決すべき技術的な問題は何か

すべてをPoCの段階で解決する必要はありません。優先度の高い項目から試し、現在の技術でどこまで対応できるのかを把握することが大切です。目標とする水準との差を整理すれば、改善が必要な部分も明確になります。得られた結果は、その後の開発内容や優先順位を決める材料になるでしょう。

市場ニーズ

どれほど優れた技術でも、顧客が「使いたい」と思わなければ事業化にはつながりません。PoCでは、顧客が抱える課題と照らし合わせ、製品やサービスにニーズがあるかを確かめます。開発側の想定と顧客が実際に求めるもののずれを確認するため、次の項目を確認しましょう。

  • 顧客が解決したい課題は何か
  • 現在はどのような方法で対応しているか
  • 開発する製品やサービスを必要としているか
  • どのような機能や性能を重視するか
  • 導入にどの程度の費用を支払えるか

ヒアリングや試作品への反応から、開発側の想定と顧客ニーズのずれを探ります。思わぬニーズが見つかれば、顧客の声を開発に取り入れ、求められる製品やサービスへ近づけていきましょう。

事業としての実現可能性

技術と市場ニーズを確認した次は、継続的な事業として育てられるかを検証します。開発や製造にかかる費用だけでなく、収益や必要な人材なども含めて考えることが大切です。特にディープテックでは、事業化までの長期的な見通しも欠かせません。主な検証項目は、次のとおりです。

  • 市場に十分な規模があるか
  • 開発や製造のコストは適切か
  • 継続して収益を得られるか
  • 必要な人材や設備を確保できるか
  • 事業化に必要な期間や資金はどの程度か

PoCの段階で詳細な事業計画まで完成させる必要はありません。「つくれる」「求められる」に加えて「続けられる」かまで見通せれば、技術を事業へ育てる道筋が見えてくるでしょう。

PoCを進める4つのステップ

PoCとは

PoCでは、いきなり検証を始めるのではなく、目的やゴールを明確にすることから始めます。そのうえで、検証項目と評価基準を決め、各段階で得た情報を活かしながら、実施から評価まで一連の流れで進めます。ここからは、PoCの計画から評価までの流れを4つのステップで見ていきましょう。

STEP1|目的とゴールの設定

PoCを始める前に、目的とゴールを明確にしましょう。目的は「何のために検証するのか」、ゴールは「どこまで確認できればよいのか」を示すものです。顧客が抱える課題や検証する技術・アイデア、想定する利用環境、達成したい性能などを整理します。

たとえば、「新しいセンサー技術を製造現場で活用できるか確かめる」を目的とした場合、「一定の環境下で必要な精度を達成する」などをゴールに設定するとよいでしょう。

目的とゴールを関係者で共有しておけば、何を検証し、どの水準に達すれば成功とするのか認識をそろえやすくなります。具体的な検証項目や評価基準へ落とし込み、次のステップへ進みましょう。

STEP2|検証項目と評価基準の設定

目的とゴールが決まったら、何を検証し、どの水準に達すれば成功かを具体化します。結果が出てからでは評価が担当者の感覚に左右されるため、事前に基準を決めておくことが欠かせません。検討したい項目は、以下の3つです。

  • 検証する項目
  • 項目ごとの評価指標
  • 成功と判断する基準

検証対象だけでなく、どの条件で試し、どこまで達成すればよいか、期間や費用も含めて整理します。評価基準は、「精度95%以上」「顧客の8割が導入を希望」「想定コスト以内」など、結果を客観的に比較できる形にするとよいでしょう。基準を具体化しておけば、PoC終了後も関係者で共通の尺度を使って評価できます。

STEP3|PoCの実施

検証項目と評価基準が決まったら、計画に沿ってPoCを実施します。最初から完成形を目指さず、確かめたいポイントに絞って小さく試すことが重要です。

実施中は、検証した条件や方法、得られたデータ、想定との違い、新たに見つかった課題を記録しましょう。数値だけを残しても、「なぜその結果になったのか」までは判断できません。途中で進捗を確認しながら、検証の進め方が適切かも確かめます。検証時の条件や経過も残しておけば、終了後の分析や再検証に役立つでしょう。

計画どおりに進まなかった場合も、原因を探るための貴重なデータになります。原因を整理して次に確かめる内容を明らかにし、必要に応じて検証方法を見直しましょう。

STEP4|検証結果の評価

PoCを終えたら、事前に設定した評価基準と結果を照らし合わせましょう。達成できた項目だけでなく、届かなかった項目や原因まで整理し、今後の方針を検討します。

  • Go:本格開発へ進む
  • Pivot:計画を見直して再検証する
  • Stop:本格開発をいったん見送る

期待した結果が得られなかった場合も、その原因を把握できればPoCの成果になります。想定との差から、技術の弱点や新たな可能性が見えてくることもあります。改善点を整理し、再検証や用途変更を考える材料にしましょう。評価結果をもとに次に取り組む内容と優先順位を整理し、Go・Pivot・Stopのどの方針をとるか、関係者間で決定しましょう。

PoCを進める際の注意点

PoCとは

PoCの成果を事業化へ結びつけるには、検証の進め方にも工夫が必要です。目的や検証範囲を定めるだけでなく、結果をどう扱うかまで考えておきましょう。実際の利用環境を意識すれば、本格開発後の手戻りも減らせるでしょう。ここからは、押さえておきたい4つの注意点を解説します。

PoCの実施を目的にしない

PoCは実施自体がゴールではなく、結果を次の行動につなげるための手段です。検証前から「結果が出た後にどう動くか」を考えておきましょう。

検証結果次の対応
評価基準を満たした本格開発へ進む
技術面に課題が見つかった改善点を整理し、再検証を検討する
市場ニーズが十分に確認できなかった対象顧客や用途を見直す
事業性に課題が見つかったコストや収益性、事業計画を見直す
解決が難しい課題が見つかった中止や方向転換を検討する

複数の部門が関わる場合は、誰が結果を確認し、次の方針を決定するのかも共有しましょう。次の行動を決めずにPoCを繰り返すと、「PoC疲れ」に陥りかねません。結果を開発計画や投資方針へ反映させることが大切です。

検証範囲を広げすぎない

PoCでは、検証したい内容を必要な範囲に絞ることが大切です。多くの機能や課題を一度に検証すると、期間や費用が膨らむだけでなく、どの要因が結果に影響したのか判断しにくくなります。

検証範囲を決める際は、今回のPoCで優先して確認する項目を定め、必要な機能や性能、かけられる期間や費用を整理しましょう。技術の性能を確認する場合も、完成品をつくる必要はなく、検証したい機能だけを備えた試作品でも対応できます。

確認したいことを詰め込みすぎず、今回のPoCで答えを出したい問いを絞り込みましょう。検証対象が明確であれば、得られた結果の原因を分析しやすくなり、次に取り組むべき内容も明確になります。

事業化の判断基準を明確にする

PoCでは、設定した評価基準をすべて満たせるとは限りません。そこで重要になるのが、評価項目に優先順位をつけることです。すべてを同じ重さで評価せず、事業化に向けて譲れない条件と、今後の開発で改善できる条件を分けておきましょう。

たとえば、技術面では最低限必要な性能、市場面では顧客からの評価、事業面ではコストや収益の見通しなどが候補となるでしょう。事業への影響も踏まえて、優先度を整理すると判断しやすくなります。

優先順位が明確であれば、一部の目標に届かなかっただけでPoC全体を失敗と判断する必要はありません。「今クリアすべき条件」と「今後改善できる部分」を分けることが、次の判断につながるポイントです。

実運用を想定した条件で検証する

PoCでは、技術単体の性能だけでなく、実際の現場に組み込んでも使えるかという視点も必要です。整った環境では問題なく動作しても、現場では設備や作業方法などの違いによって、想定外の問題が生じることがあります。実際の利用場面を想定し、次のような条件も確認しておきましょう。

  • 温度や湿度などの周辺環境
  • 既存の設備やシステム
  • 利用人数や使用頻度
  • 現場での作業工程

製造現場で使う技術なら、既存設備との相性や作業を妨げないかといった点も検証対象となるでしょう。実際に使う人の意見も取り入れ、開発側だけでは把握しにくい問題を洗い出しましょう。実運用に近い条件で試すことが、本格開発後の手戻り削減につながります。

まとめ|PoCを活用して事業化の可能性を見極める

PoCでは、技術の実現可能性や市場ニーズ、事業性を検証し、本格開発へ進むかを見極めます。目的や評価基準を明確にしたうえで検証を行い、結果に応じてGo・Pivot・Stopを判断することが大切です。実運用を想定した条件で試すことも意識しましょう。

PoCの実施自体を目的にせず、得られた結果を開発計画や投資判断に活かし、事業化に向けた次の一歩につなげましょう。