ディープテックの技術を事業化したいけれど、研究開発に時間がかかり、人材や資金も不足していませんか?この記事では、ディープテックのオープンイノベーションの役割や必要性、主な連携先と連携方法を解説します。

技術評価や知的財産の課題、具体的な進め方も紹介します。外部連携を活用し、技術の社会実装を目指す参考にしてください。

ディープテックにおけるオープンイノベーションの役割

机のん上の小物

ディープテックにおけるオープンイノベーションとは、自社だけで研究開発を進めるのではなく、外部企業や大学、研究機関などの技術や経営資源を活用し、社会実装を目指す取り組みです。研究成果を製品やサービスにつなげるには、技術開発だけでなく、事業化に必要な人材や設備、市場へのアクセスなども求められます。

ここでは、オープンイノベーションが果たす2つの役割を解説します。

技術の社会実装を加速させる

オープンイノベーションは、研究機関やスタートアップなどが持つ技術を活用し、研究成果を製品やサービスへつなげる役割を果たします。ディープテックは革新的な技術を基盤とする一方、研究段階から実用化までに多くの検証や開発を要します。

外部の知見や技術を組み合わせることで、自社だけでは対応が難しい課題を解決し、社会実装を目指せるのです。具体的には、次のような連携が考えられます。

  • 大学の研究成果を活用した製品開発
  • スタートアップ技術を取り入れた試作品開発
  • 企業同士の連携による実証実験や商用化

例えば、大学が開発した新素材の技術を製造業が持つ量産技術と組み合わせれば、研究成果を製品化へ進める道筋の検討が可能です。外部の技術やノウハウを取り入れ、研究開発から実用化までの課題に対応することが、社会実装の促進につながります。

不足する経営資源を補完する

ディープテックの事業化では、自社に不足する人材や資金、設備などの経営資源を外部連携によって補完できます。

研究開発に高度な専門知識や長期的な投資が求められる領域では、必要な資源をすべて自社だけで確保することが難しい場合もあるでしょう。オープンイノベーションでは、連携先の強みを活用することで、次のような経営資源を補完できます。

  • 専門人材や研究開発のノウハウ
  • 研究設備や実験環境
  • 開発や実証に必要な資金
  • 販売網や顧客との接点

自社が持つ技術や製造基盤に、大学の専門知識やスタートアップの技術、他社の販売網などを組み合わせることで、事業化に必要な体制を構築しやすくなります。自社の強みと不足する資源を整理し、目的に合った連携先を選ぶことが、ディープテック事業を進めるうえで重要です。

ディープテックにオープンイノベーションが必要な理由

握手する人

ディープテックは、先端技術を活用して社会課題の解決や新たな市場の創出を目指す一方、研究開発から事業化までに長い期間を要する傾向があります。

自社だけで事業化を進めようとしても、技術や人材、資金などの面で課題に直面することがあります。そのため、外部企業や大学、研究機関などと連携し、互いの強みを活用するオープンイノベーションが重要です。

ここでは、ディープテックに外部連携が必要とされる理由を2つ紹介します。

研究開発に長い期間を要する

ディープテックは基礎研究から実用化までに長い期間を要するため、外部連携による研究開発の効率化が重要です。事業化には、技術の確立に加え、性能検証や安全性評価、実証実験などが必要になります。

自社だけでは技術や設備の確保に時間がかかる場合もありますが、大学、研究機関やスタートアップとの連携により、専門性を活用できるのです。具体的な連携例は以下のとおりです。

  • 大学と基礎研究を共同で進める
  • スタートアップの技術で試作品を開発する
  • 研究機関と実証実験や性能評価を行う

外部の知見や設備で不足する工程を補い、連携先の強みに応じて役割を分担しましょう。研究開発の進捗に合わせて協力範囲を見直すことも大切です。

事業化に必要な資源が不足しやすい

ディープテックの事業化では、技術や人材、資金などが不足しやすく、外部との連携による補完が重要です。

大企業でも、新たな技術領域に進出する際は、専門人材や事業化のノウハウを十分に確保できない場合があります。また、研究開発に加え、量産体制や販売網の整備にも投資が必要です。外部連携では、次のような資源を補完できます。

資源資源の内容
技術スタートアップの独自技術や特許
人材大学、研究機関の専門研究者や技術者
資金共同研究費や外部投資家の資金
事業基盤製造設備や販売企業の販路

ただし、自社と外部の役割を整理し、競争力や収益につながる技術・ノウハウは自社に蓄積することが大切です。

ディープテックの主な連携先

会議中の人々

ディープテックの事業化では、自社に不足する技術や人材、ノウハウを補う連携先の選定が重要です。主な連携先には、以下の4つがあります。

連携先特徴・役割
スタートアップ独自技術や専門人材を活用し、技術開発や製品化を進める
大学、研究機関基礎研究や専門知識を活用し、技術検証や研究開発を行う
大企業生産設備や販売網、量産化のノウハウを活用し、事業化を支援する
ベンチャーキャピタル(VC)資金提供や投資先とのネットワークを通じて事業成長を支援する

連携先を選ぶ際は、事業化の段階や技術課題に応じて役割を整理することが重要です。あわせて知的財産の取り扱いや役割分担も確認しましょう。

オープンイノベーションの連携方法

家を虫眼鏡で見ている

ディープテックのオープンイノベーションでは、連携の目的や事業化の段階に応じて、適切な方法を選ぶことが重要です。代表的な方法として、共同研究・共同開発とベンチャークライアントモデルがあります。

技術を共同で開発するのか、外部企業の技術を顧客として導入するのかによって、必要な投資や役割分担が異なるのが特徴です。ここでは、それぞれの特徴と活用方法を解説します。

共同研究・共同開発

共同研究・共同開発は、企業や大学、研究機関などが技術や人材、設備を持ち寄り、協力して研究開発や製品化を進める方法です。ディープテックでは、自社にない専門技術や研究設備を活用し、技術の確立から実用化までを目指す際に活用できます。

主な連携内容は、以下のとおりです。

  • 大学や研究機関と基礎研究や技術検証を行う
  • 試作品や製品をスタートアップと共同開発する
  • 製造企業と量産技術や生産工程を確立する

共同研究・共同開発では、各組織が持つ技術や経営資源を組み合わせることで、自社だけでは対応が難しい課題に取り組めます。

一方、研究開発の目的や成果物の権利関係、費用負担などを事前に整理する必要があります。特に知的財産については、既存技術と共同開発で生まれた成果を区別し、利用条件や権利の帰属を契約で明確にしておきましょう。

ベンチャークライアントモデル

ベンチャークライアントモデルは、大企業がスタートアップの顧客となり、既存の製品や技術を自社の業務に導入する連携方法です。共同研究・共同開発と異なり、技術や製品を購入・利用して、実際の事業課題の解決に活用します。

主な進め方は以下のとおりです。

  • 自社の事業課題や技術ニーズを明確にする
  • 課題解決につながるスタートアップを探す
  • 製品や技術を有償導入し、実証・検証する
  • 導入効果を評価し、本格導入を検討する

大企業は実際の業務環境で技術を検証でき、スタートアップは売上や大企業での導入実績を得られます。ディープテックでは、共同開発前に技術の実用性を確認する際にも活用できます。導入前には性能や安全性、既存システムとの適合性を確認し、本格導入の条件を整理しましょう。

ディープテックのオープンイノベーションにおける課題

考え込む人

ディープテック領域でオープンイノベーションを進める際は、技術や知的財産、組織体制に関する課題を把握しておくのが重要です。外部企業や大学との連携によって技術や経営資源を補完できる一方、連携先との認識の違いや社内調整が事業化の遅れにつながる場合もあります。

ここでは、ディープテックのオープンイノベーションで発生しやすい3つの課題を解説します。

技術評価が難しい

ディープテックの技術は専門性が高く、研究段階の成果だけで将来性や事業化の実現可能性を判断することが難しい場合があり、注意が必要です。研究成果が優れていても、量産化やコスト削減、既存製品への組み込みなどに課題が残るケースもあります。

外部企業や大学との連携を検討する際は、技術の新規性だけでなく、実用化までの道筋を確認することが重要です。技術評価では、以下の点を確認しましょう。

  • 技術の成熟度と実証実験の実績
  • 量産化や商用化に向けた技術的な課題
  • 事業化までに必要な開発期間や追加投資
  • 自社の製品や事業との適合性

研究成果の説明だけで判断せず、試作品や実証データなどの客観的な情報を確認することが大切です。また、自社だけで評価が難しい場合は、外部の専門家や研究機関の知見も活用し、技術面と事業面の両方から検討しましょう。

知的財産の取り扱いが複雑になる

ディープテックのオープンイノベーションでは、複数の企業や研究機関が技術や研究成果を持ち寄るため、知的財産の権利関係が複雑になりやすい点に注意が必要です。

連携開始前に取り決めが不十分な場合、研究成果の利用や製品化の段階で意見が対立するおそれがあります。特に、以下の項目は契約段階で明確にしておきましょう。

  • 連携前から各社が保有している知的財産の権利
  • 共同研究や開発によって生まれた成果の帰属
  • 研究成果や特許を利用できる範囲
  • 第三者へのライセンスや事業化に関する条件

共同研究で生まれた成果をどちらが保有するのか、相手企業が保有する特許を自社の製品に利用できるのかによって、事業化の進め方は変わります。研究開発部門だけで判断せず、法務や知的財産部門も交えて契約内容を整理することが重要です。

研究開発部門だけで判断せず、法務や知的財産部門も交えて契約内容を整理することが重要です。

組織内の合意形成に時間がかかる

ディープテックのオープンイノベーションでは、外部企業や大学との連携方針を決めても、社内の合意形成に時間がかかる場合があります。研究開発部門は技術の可能性を重視する一方、事業部門は収益性や市場性、経営層は投資回収や経営戦略との整合性を重視するなど、部門ごとに判断基準が異なるためです。

合意形成を進めるには、次の点を整理して関係者間で共有しましょう。

  • 連携の目的と自社の事業戦略との関係
  • 各部門が担う役割と責任
  • 投資額や開発期間、事業化の判断基準
  • 経営層への報告や意思決定のプロセス

連携の初期段階から関係部門を巻き込み、技術面と事業面の目標をすり合わせておくと、後の判断が進めやすくなります。また、段階ごとの成果や課題を定期的に共有し、継続投資や事業化の判断を行う体制を整えましょう。

オープンイノベーションの進め方

大企業がディープテック領域でオープンイノベーションを進めるには、連携の目的を明確にし、計画的に事業化を目指すことが重要です。外部企業や大学との連携は、技術を導入するだけでなく、実証や事業拡大まで見据えて進める必要があります。

ここでは、目的や連携テーマの設定から事業化まで、基本的な2つのステップを解説します。

目的と連携テーマを明確にする

オープンイノベーションでは、自社の課題と外部連携で実現したいことを整理することが重要です。目的が曖昧なままでは、技術や研究成果を獲得しても自社の事業につながらない可能性があります。

まず、以下の項目を明確にしましょう。

  • 自社の技術面や事業面の課題
  • 獲得したい技術や人材、経営資源
  • 連携で達成したい事業目標
  • 連携に充てる予算や期間

例えば、材料開発の技術があっても量産化のノウハウが不足している場合、製造技術を持つ企業が連携先の候補になります。自社の強みと不足する資源を把握し、目的に合った連携先を選びましょう。また、整理した内容を関係部門や経営層と共有し、社内の認識をそろえることも大切です。

段階的に事業化を進める

ディープテックの事業化では、連携先の選定から実証、事業拡大までを段階的に進めることが重要です。各段階で成果や課題を確認し、次の投資や開発に進むか判断しましょう。

基本的な進め方は以下のとおりです。

  • 連携先を選定し、技術や役割分担を確認する
  • 共同研究や試作品開発で技術を検証する
  • 実証実験で市場性や実用性を評価する
  • 事業化の条件を整え製品化や事業拡大を進める

各段階で目標や評価基準を設定すれば、技術の進捗に加え、事業性や投資に見合う成果も判断できます。実証結果に応じて開発計画や連携体制を見直し、継続・中止を判断する仕組みを整えましょう。

まとめ:ディープテックのオープンイノベーションを事業化につなげる

ディープテックの事業化には、外部企業や大学、研究機関などとの連携によって、技術や人材、資金などを補完することが重要です。連携先の特徴を理解し、共同研究・共同開発やベンチャークライアントモデルなど、目的に合った方法を選びましょう。

また、知的財産や役割分担、事業化の判断基準を整理し、段階的に取り組むことで、技術の社会実装を目指しましょう。